続いて向かったのは、今回の撮影のメインロケーションである城ヶ島。
三浦市のランドマークとして知られる城ヶ島大橋を渡り向かいます。赤く大きなアーチを描くこの橋は、三浦に育った私にとって、単なる橋ではなく、日常と非日常を分ける“結界”のような存在です。
橋を渡るとその下に佇むのが、詩人・北原白秋の石碑。
そこには、あまりにも有名な詩「城ヶ島の雨」が刻まれています。
潮の香り、吹き抜ける風、遠くで砕ける波音。
石碑の前に立つと、詩の言葉が単なる文字ではなく、空間そのものとして立ち上がってくるように感じられます。城ヶ島という場所が持つ、文学的で、どこか精神性の高い空気。その入口に立っていることを、自然と意識させられる瞬間でした。
なぜ城ヶ島で撮影するのか
城ヶ島を今回の撮影地に選んだ理由は、
まずひとつは、私の故郷が三浦市であること。この土地で育ち、この海と空を見てきたからこそ、城ヶ島は単なる「綺麗な場所」ではなく、感情や記憶と深く結びついた場所です。
そして、城ヶ島が持つ圧倒的なロケーションの力。
広大に広がる岩場は、太平洋の先までそのまま続いていくかのような錯覚を覚えます。視界を遮る人工物はほとんどなく、空と海と大地だけが支配する世界。その中に被写体が立つことで、人という存在の輪郭が、より鮮明に浮かび上がります。
夕陽の美しさも、城ヶ島を語るうえで欠かせません。
しかもその表情は、分単位で変化していきます。同じ場所、同じ立ち位置であっても、数分後にはまったく違う世界になる。その儚さとダイナミズムが、写真表現にはこれ以上ない魅力となります。
ウェディング撮影でも有名なほど完成度の高いロケーションでありながら、決して“作られすぎていない”。
神秘的で透明感があり、海・空・陸地側の剥き出しの岩場や、たくましく生える草が混在することで、衣装や所作、光の捉え方次第で、いくらでも表現を広げることができます。
写真に携わる者であれば、誰もが一度は憧れる場所だと思います
城ヶ島大橋と北原白秋の石碑での撮影
撮影の始まりは、城ヶ島大橋と北原白秋の石碑の前から。
赤い橋の存在感は非常に強く、画面に入れるだけで一気に緊張感が生まれます。そこに石碑の重厚さが加わり、静と動、人工と自然が共存する独特の空間が生まれます。
この場所での撮影は、これから始まる城ヶ島での物語の“序章”。
過剰に語らず、しかし確かな意思を感じさせる。そんなカットを意識しながら、シャッターを切っていきました。

いよいよ城ヶ島へ
そして、いよいよ城ヶ島の岩場へと足を進めます。
最初に狙ったのは、富士山を背景にしたカット。岩場の先に広がる穏やかな海、その向こうに浮かぶ富士山。自然が何層にも重なり合う、完璧とも言える構図です。
今回は青い和傘を用意していました。透明感のある佇まいに、青の和傘がよく映え、着物の赤い裏地がさりげなくアクセントになります。
色のコントラストは強いはずなのに、不思議と全体は静かで、澄んだ印象になる。Chiiroさんの持つ空気感が、すべてをまとめ上げているようでした。
立ち姿ひとつで、場の空気が変わる。
その神秘性は、意図して作れるものではなく、積み重ねてきた表現の結果なのだと感じます。






夕陽とともに移ろう時間
撮影を続けるうちに、太陽はゆっくりと高度を下げていきます。
城ヶ島全体が、昼とはまったく異なる表情を見せ始めました。
夕陽がChiiroさんに差し込む瞬間、その姿は陽を纏うかの如く輝き始めます。
決して強すぎず、しかし確かに存在を際立たせる光。自然の中にいながら、まるで光そのものに選ばれた存在のようでした。
岩場には歩きやすいように小さな橋が架かっており、その人工物でさえ、この風景の一部として溶け込んでいます。
雄大な岩場を背景に海側を向けば、どこまでも続く地平線が広がり、海外の秘境に立っているかのような感覚に包まれます。




一方で、陸側を背景にすると、青い空とのコントラストが際立ち、これまで見たことのないような空間が立ち上がります。
その姿は、まさに天から降り立った存在のようでした。



神々しく
日がさらに低くなるにつれ、光は柔らかさを増し、Chiiroさんの輪郭を優しく縁取ります。
陽を纏うかの如く光り輝く姿は、神々しさすら感じさせるものでした。







草原に身を委ねるカットでは、まるで「ここは我が世界である」と語りかけてくるような佇まい。


自然の一部として存在しながら、確かに中心にいる。そのバランスは、簡単に生まれるものではありません。
マジックアワーへ
そして、ついにマジックアワー。この時間帯だけの特別な空気が、城ヶ島を包み込みます。
岩場の最先端を目指し、強風と寒さの中を無心で移動しました。
条件としては決して良いとは言えませんが、それでも「この瞬間を逃したくない」という想いだけが身体を動かしていました。
その結果生まれたのは、優しく、そして力強い作品。
厳しい自然と、その中で静かに立つ存在。その対比が、深く心に残る作品となりました。








最後に
ここまで辿り着けたのは、Chiiroさんの力があってこそです。
寒さや風の中でも集中を切らさず、最後まで表現に向き合い続ける姿勢。その一つひとつが、作品を確実に押し上げてくれました。
この神秘的でアートな雰囲気は、Chiiroさんでなければ成り立たなかったと断言できます。
あくなき作品へのこだわり、妥協を許さない姿勢、そして表現することへの真摯な想い。そのすべてが重なり合い、今回の作品は生まれました。
城ヶ島という場所、刻々と変わる光、そしてChiiroさん。
その三つが重なった、かけがえのない一日でした。

以上











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